機械・電気電子・材料・物理工学系

物理を学ぶ学科の分類

物理の「力と運動」,「熱・気体の運動」の分野をさらに深めていく「機械工学」,「電気と磁気」の分野をさらに深めていく「電気電子工学」,入試に出題されないので高校では教わらないことが多い物理2の最後の「原子と原子核」の分野をさらに深めていく「物理工学」の分野があります。そして,化学を学ぶ学科でも出てきた「材料工学」の分野があります。工学部の基幹分野は「機械工学」と「電気電子工学」です。この2つの学科の違いはわかりますか? 機械工学は「力学的に動くものを創り出す」分野です。だから,テレビの画面のように物理的に動かないものには興味がないのです。その代わり,エネルギー源は何でもありです。電気電子工学は動くものであれ,動かないものであれ扱います。この点では広く見えますが,エネルギー源は電気しか用いません。就職先の違いもありますが,このことは選ぶときの参考にしてください。


機械工学

「力と運動」を深めていく「機械系」,「熱」を深めていく「エネルギー系」で構成されています。機械系は「動くもの」をつくる分野で,様々な輸送機械(車,航空機,ロケット,船舶など)やロボットや精密機械の設計・製作(部品加工と組み立て)・制御を扱います。エネルギー系はエネルギーの有効利用を研究する分野で,風力・波力・地熱などの発電,内燃機関(車やジェット機・ロケットのエンジン)の研究を行っています。おそらく,皆さんは機械系でやっていることだけが機械工学だと思っていると思います。もっと広い分野だと言うことを忘れないでください。また,航空・宇宙を学びたいという方は気をつけてください。エンジンに関しては各大学で研究していますが,航空関連を集中的に学ぶことが出来るのは限られた大学だけになります。はっきり言ってしまうと,国立12大学の中では名古屋大学のみです。(余計なことを付け加えますと,国産ジェット機MRJの開発ももう終わります。ボーイング,ロッキードなどのメーカーでも大型ジェット旅客機の新型の計画はありません。予想ですが,今後10年間は新型ジェット機の開発は行われないだろうと思います・・・ もちろん,エンジン関係は改良の余地はいくらでもありますから,開発は続けて行きますし,いくらでも仕事はあります・・ だからどうだと言うつもりはないのですが・・三菱重工も航空関係の採用は減っていて,宇宙に移行しているようです)


LinkIcon名古屋大学 機械・航空宇宙工学科
LinkIcon名古屋工業大学 電気・機械工学科
LinkIcon岐阜大学 機械工学科
LinkIcon三重大学 機械工学科
LinkIcon静岡大学 機械工学科
LinkIcon豊橋技術科学大学 機械工学系
LinkIcon静岡大学 機械工学科
LinkIcon福井大学 機械工学科
LinkIcon金沢大学 機械工学類
LinkIcon富山大学 機械知能システム工学科
LinkIcon信州大学 機械システム工学科
LinkIcon信州大学繊維学部 機械・ロボット学系

電気電子工学

液晶,CPU,太陽電池などのための新しい電子デバイスを開発する分野(この分野では化学の知識も必要です),発電・電力輸送を研究する分野,電気自動車のモーターからロボットのための超小型モーターまでを扱う分野,携帯電話や地デジなどの通信技術の開発を行う分野からなります。工学部の中では,最も就職が安定している学科です。注意点はいくつかあります。たとえば,電車のモーターになると,電気電子では無理で機械工学の分野になります。東日本大震災以来,電力輸送の重要性が再確認されていますが,スマートグリッドという言葉を知っていますか?通信・制御機能を活用して停電防止や送電調整のほか多様な電力契約の実現や経費削減等を可能にした電力網です。このスマートグリッドにより,省エネルギーが行えるだけでなく,災害時に強い電力システムの構成が可能になります。また,最近では自動車メーカーへの就職が増えています。(もちろん,電気自動車が多くなったためです。) 半導体メーカーや液晶部門の不調などで電気電子工学への不安が大きくなっているようですが,電気電子工学はそれだけで構成されているわけではありません。就職への不安を持つ必要はないと思います。


LinkIcon名古屋大学 電気電子情報工学科
LinkIcon名古屋工業大学 電気・機械工学科
LinkIcon岐阜大学 電気電子・情報工学科
LinkIcon三重大学 電気電子工学科
LinkIcon豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学科
LinkIcon静岡大学 電気電子工学科
LinkIcon静岡大学 電子物質科学科
LinkIcon福井大学 電気・電子工学科
LinkIcon金沢大学 電子情報学類
LinkIcon富山大学 電気電子システム工学科
LinkIcon信州大学 電気電子工学科

物理工学

工学部の中で最もノーベル賞に近い分野です。ナノテクノロジーを研究していく分野で,高校の物理2の「原子と原子核」をさらに深く学んでいく分野です。ナノテクノロジーってわかりますか?ナノメートルサイズまで小さくすると,中学・高校(1,2年)で学んできた法則が成り立たない世界になります。困ったことだと考えることも出来ますが,これまで不可能だったことが可能になる世界です。様々な電子デバイスに応用されることが多いので,電気電子工学科の中には必ずと言っても良いほど含まれています。(応用物理学という名称になることもあります。東大は応用物理学科です。) 国立12大学の工学部以外では,静岡大学の理学部物理学科には,物理工学系の先生が沢山所属しています。下のリンクで内容を確認してください。(明確な物理工学・応用物理のコースがある学科のみ示しています。) 名古屋大学工学部の「新物理工学科」はもちろん,ここになりますが,「エネルギー理工学」もこちらの分類にかなり近いものになるかと思います。


LinkIcon名古屋大学 物理工学科
LinkIcon名古屋大学 エネルギー理工学科
LinkIcon名古屋工業大学 物理工学科
LinkIcon岐阜大学 電気電子・情報工学科
LinkIcon三重大学 物理工学科
LinkIcon静岡大学 電子物質科学科
LinkIcon福井大学 物理工学科

材料工学

材料工学は化学と物理を共に学んでいく学科です。これまでにない性質や機能を持った新しい素材を開発していく学科です。素材を創り出すときには「化学」が,その性質や機能を解明するためには「物理」が必要になります。大学によって「化学」と「物理」のウェイトが違います。ここでは,物性の解明を中心とした「物理」のウェイトの比較的大きい国立12大学の材料工学系の学科を紹介します。「物理」と「化学」が半々の学科も加えてあります。名古屋大学では,物理工学科の中に入っています。名古屋大学の物理工学科を受験する方は,後期入試には様々な選択肢があることは忘れないようにしてください。(単に,物理工学科という名称にこだわらない方がよいということです。)。


LinkIcon名古屋大学 物理工学科
LinkIcon名古屋工業大学 物理工学科
LinkIcon静岡大学 電子物質科学科
LinkIcon福井大学 材料開発工学科
LinkIcon富山大学 材料機能工学科

Tips
ロボットについて研究したいという受験生も多いと思います。「機械工学」,「電気電子工学」,「情報工学」のいずれの分野の学科を見ても,ロボットがキーワードになっています。いったいどこに進めばよいのでしょうか?
 1つの例えですが,ロボットアームについて考えてください。機械工学だとおそらく三本指になります。箸だってペンだって薬指と小指はなくても使えますよね・・ これに対して電気電子のロボットはモーターありきの世界です。5本の指を持たせて場合によると17個もの小型モーターを完全に制御して人間の手と同じ動きをさせようとします。機械工学でのロボットは産業ロボットとか合目的ということが重視される世界だと思います。電気電子は,真の意味の義手を作り出そうとしている感じです。
 どちらが本流なのかというと,やはり機械工学だと思います。(ただし,名古屋大学はある時期にロボット工学関係の先生を「電気電子・情報工学科」に集めました。今は,再び「機械・航空工学科」が中心になっています。電気電子情報工学科では,他大学の情報工学科に近いアプローチです。) でも,結局はお好きな方をどうぞ・・です。

更新情報

2018.05.14
名古屋大学の学科を変更しました。